肉の話

昔の話になるが、5歳ほど年上の会社の同僚と好きな肉についての話になる。


信じられない話かもしれないが、自分は18歳までほとんど牛肉を食べたことがない。

東京に出て、初めて吉野家の牛丼を食べた際に非常に衝撃を受け、その場でお代わりをした、という経験がある。

というか、その時に初めて、牛肉をほとんど食べたことがない、という事実に気がつく。

もちろん、レストランのハンバーグとかには入っていたのだろうが、牛肉と認識して食したのはそれが初めてのことである。


なぜそんなことになるかと言えば、地元に1軒しかない肉屋が豚肉と鶏肉しか取り扱っていない、という事情がある。

18歳の夏休みにその肉屋で買い物をした際にそのことを認識する。

そしてもちろん、自分が言うのもなんだが、あまり裕福な感じではなかったのだろう。


そんなわけで、牛肉には思い入れがあるんですが、豚肉がホーム、という感覚もあるんです。

すごく迷うんですが、鼻差で牛肉ですね。

という話を熱く同僚に語る。


その後で、◯◯さんはどうですか? と話を振ると、恐ろしく申し訳なさそうに、

「俺はどの肉とか関係なくてひき肉が好きなんだよね」

とか言う。

その時の自分は、なんだコイツ〜〜〜〜〜〜〜、みたいな顔をしていたんだと思う。


今日の昼、魯肉飯注文したら、ご飯に八角の味がするそぼろをかけたものが供される。

そのそぼろ丼を食しながら、同僚との話を思い出す。

今ならわかる。