TENETを観る

映画『TENET テネット』オフィシャルサイト|大ヒット上映中

ここ最近「インセプション」「インターステラー」と立て続けに見て、ノーラン作品に割と疑問を抱いているのだが、コロナ禍以降、間違いなく最大の大作であり、観ない理由がない。


感想からいうと、正直言ってよく分からなかった。

前提として、一見で全てを把握できる内容ではなく、複数回観てようやく理解できるタイプの作品である。

物語が複雑であるというのはあるが、物語以前にこの作品のキモである「時間の逆行」の概念が、自分の理解力が足りないのかも知れないがうまく把握できない。

近作のジョジョでよくある(具体的にはスティール・ボール・ランの大統領)、スタンドの能力がよく分からないので何が起こっているのかよく分からない、というのが感覚として近い。

タイムスリップでもタイムリープでも無い、「時間の逆行」というアイディアはフレッシュあることは間違いない。

「過去に戻る」ということを、これほどうまく説明できるロジックは少なくとも自分は知らない。

しかし、「時間の逆行」のルールの説明が唐突過ぎたり、順行する時間と逆行する時間の交錯がうまく把握できなかったりで混乱してしまう。

それでも映像の新規性や仄かし方のうまさで最後まで観られるのだが、2回目以降の理解の取っ掛かりが十分に提示されているとは思えず、「もう一度見たところで面白さが増すのだろうか」という疑念が否めない。


物語は相変わらずのノーラン節で、観客を置いていくようなストーリーの端折り方、都合の良い展開が目立つ。

「乗客の多いバスでそんな話する?」とか、「その状況で敵に監視されてないのはおかしい」とか、明らかなアラが多い。

特にクライマックスは映像の面白さはあるのだが、物語的には何が起こっているのか分からない。

この部分に関しては5回ぐらい見ても理解できるかどうか自信がない。


また、映像は確かに面白いのだが、文句もある。

「時間の逆行」時のあからさまな「撮影時に逆に行動して、逆再生で普通に動いているように見せる」感が非常に気になる。

ここは映画としては、「世界の時間が逆行しているのに主人公たちは普通に動いている」という風に見せないと、没入感が削がれてしまうと思う。

ノーランはCG嫌いで極力使わないようであるが、ここはきちんと合成を使ってもらいたかった。


文句ばかりになってしまったが、もちろん魅力的な作品であり、もう一度観たい気にはなっている。

でも今のところ、「アマプラとかに入ったら見ようかな」という感じである。