芦田愛菜主演、映画『星の子』公式サイト 2020年10月9日(金)全国公開!
予告編を見、興味をそそられ、結局観にいく。
作品の雰囲気がとにかく良い。
一番感心したのはキャスティングで、登場している役者全員が映画の中で必要なロールを過不足なくこなしている。
観る前は主人公ちひろの両親役の永瀬正敏と原田知世の夫婦は浮世離れした雰囲気になるんじゃないか思っていたが、生活感がすごく出ていて、実際にこういう家族がいても全くおかしくない。
先生役の岡田将生、主人公千尋の両親が心酔する新興宗教関係者の高良健吾と黒木華など、脇役の人たちも一部の隙なく役にはまっている。
また、世間の流れに逆行するように抑えた演技をしており、なんなら叔父役の大友康平(原田知世の兄)が一番演技をしている。
演出は多少トゥーマッチに感じた部分はあるが、北野映画っぽい間の取り方とか、静謐な感じとか、抑えた演技など、一時期あった邦画の「この感じ」が久々来たな、と感じる。
最後にこの感じの邦画を観たのは、是枝裕和の「空気人形」だと思う。
しかしながら、物語自体はいまいちに感じる。
公式サイトでは感動作として売り出しているようであるが、なんのカタルシスもオチもなく、狐につままれたような気分で終わる。
一番問題だと思うのが、冒頭5分足らずの両親が新興宗教にハマる理由の部分である。
生まれたばかりのちひろは病弱で、全身に蕁麻疹が起きるのだが、新興宗教が売り出す水で治る、という経緯なのだが、その水のおかげでちひろが助かったとしか思えないように描かれている。
なので、その新興宗教を非難する人間の心情がすんなり入ってこない。
正直言って、自分は宗教に関しては懐疑的な方なので、どちらかと言えば非難する側なのだが、そちらの立場で捉えようとすると「じゃあなんでちひろは治ったの?」という疑問を抱く事になる。
非常に手際良い演出で、映像的にも説得力があり、よくできた導入だとは思うが、事実として描いてしまっている。
ここは父親か母親がちひろに語る、という形式にして、本当かどうかわからない、という余白を作っておかなければダメなんじゃないかと思う。
非常に良い雰囲気で浸れる映画ではあるが、映画に向いていない物語なのかもしれない。
いずれ小説を読もう。