MINAMATAを観る

映画『MINAMATA―ミナマター』公式サイト

以前予告編を見て、映像の質感が良く、雰囲気も良さげだし、何より水俣病の話ということで興味をそそられ、観に行くことにする。


全体としては「ウェルメイドな作品だな」と思う。

演出も演技も丁寧で、スタッフは良い仕事をしていると思う。

特にジョニー・デップは今でも「あれジョニー・デップだよね?」と思えるぐらい、役に没入している。


その一方で物語は少し不満がある。

この作品は主にユージン・スミスの遍歴の話であるのだが、それはそれとして、水俣病をめぐる社会の動向や住民たちは遍歴の舞台装置でしかない、という感じが少しある。

「事実を元にした」と冒頭に提示されるのだが、ユージン・スミスの物語として語るために、いろいろなところをねじ曲げたのだろうというのがみて取れる。


1番「あれ?」と思ったのが、真田広之演じる交渉団のリーダー(ヤマザキ・ミツオ)が突如ユージンの英語を通訳したところである。

それまでヤマザキが英語を解する、という描写がなく、突如そういったシーンが現れる。

そこでチッソの社長が英語を話していたり、英語が話せる水俣病患者がいたりすることに違和感を感じるようになる。

実際はアイリーンを介してコミュニケーションをとっていて、映画的な省略として登場人物自身に英語を話させたと思う。

英語圏であれば違和感がないのだと思うのだが、日本を舞台にした作品なので、日本人の自分には大きな違和感がある。


物語もそんな感じで、水俣病の前提がある程度あるので、違和感を感じてしまう。

ユージンが来日してから、ライフに写真が掲載されるまでの時間経過がよくわからないとか、ネガをめぐる不可解な経緯、ユージンの不法行為、カメラを通じた患者との交流の件など、気になる部分は多い。

繰り返しになるが、自分は水俣病に関する前提がつぶさではないしてもあり、それでこの作品の背景は理解できるのだが、水俣の事を知らないアメリカ人がこの映画を見て、何を思うのかは気になる。