最後の決闘裁判を観る

最後の決闘裁判|映画|20世紀スタジオ公式

正直いって全くノーマークだったのだが、上映時間的にいい感じだったのと、ベン・アフレックマット・デイモンリドリー・スコットが製作しているならそこそこ楽しめるだろうという判断で観にいく。


「フランスで法的に認められた最後の決闘」という史実をもとにした映画なのだが、思った以上に面白い。

決闘をするカルージュとル・グリの2人、その決闘のきっかけとなるカルージュの妻マルグリット、それぞれの視点で事実が語られていく、いわゆる羅生門形式である。

その語り口の手際が非常によく、視点の違いで何度も同じシーンを見せられるということもなく、テンポ良く物語が進む。

もちろん同じシーンもあるのだが、行われていることは視点によって改変されることはなく、その事象によって受ける印象が変わる。

具体的にはマルグリットがル・グリにレイプされる、というシーンが両方の視点で描かれるのだが、ル・グリ視点で見ると、「こいつ最低だな」という感情が喚起されるが、マルグリット視点で見ると、えも言われぬ感情にさせられる。

こういう羅生門的醍醐味も十分に堪能できる。


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物語は#metoo以降の現状にものすごくフィットする内容なので、どこまでが事実なんだろう、という部分は非常に気になる部分であるが、かなりきっちり調べられた上で描かれたもののようである。

14世紀にほぼこのような出来事が起こっていたことに驚きを禁じ得ない。

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脚本の執筆過程も面白く、この話を取り上げたマット・デイモンの慧眼は素晴らしいと思う。


演技も演出も良質で、全く文句のつけようがない。

マット・デイモンも、最初全く気が付かなかったベン・アフレックも、ジョディ・カマーも素晴らしかったのだが、やはりアダム・ドライバーが良い。

アダム・ドライバーは中世にも、現代にも、遠い過去の宇宙のどこかにもアダム・ドライバーのままでハマれるのがすごい。


全く気になっていなかった映画ではあるが、今は「観た方がいいんじゃない?」と勧められる映画である。