マッドマックス : フュリオサを観る

映画『マッドマックス:フュリオサ』公式サイト

前作の「怒りのデスロード」がとんでもない出来で、間違いなく年間ベストに入るぐらい面白かった作品であった。

その続編、というか前日譚ということであれば、観ない選択肢はない。

最近は環境の変化で映画は観辛くなっているのだが、無理を押して観に行くことにする。


どんな映画か概要を書こうとしたのだが、よくよく考えれば、マッドマックスの世界観はなかなか説明しづらい。

いわゆる「世紀末感」のオリジンみたいな作品であり、北斗の拳などを筆頭に後世に多大な影響を与えた作品であるが、じゃあそれを説明しろ、となると難しいものがある。

自分はマッドマックスやフォロアーの作品で世紀末感の素養があるので、登場人物や乗り物の奇抜なビジュアルもすんなり飲み込めるのだが、一歩引いて考えると独特すぎる世界観だと思う。

それでも今の小学生ぐらいの子が見ても、やっぱアガるんだろうな、という気はする。

なんというか、ドリフとかドラえもんみたいに、普遍的にアガる世界観なんだと思う。

どんな映画かは実際観てとしか言いようがない。


この映画はとにかくクリス・ヘムワーズ演じるディメンタスが最高であった。

完全に製作者の意図するところではないと思うが、「ザ・漢」という感じで少し憧れてしまう。

男に生まれたからこそ貫き通せるあの我儘、傲慢さが眩しくてたまらない。

それをフュリオサがひっくり返す、というのがこの映画の見どころなのだと思うが、正直ディメンタスの方に夢中になる。

クリス・ヘムワーズというキャスティングもやっぱりよくって、ゴリゴリのマッチョでありながら、ベビーフェイスで可愛げがあるというのがかなりいい感じである。

映画を観た人は「真逆のことを言っている」と思われるかもしれないが、ディメンタスの顛末もまた最高で、あんな因果応報を喰らう、というのは「それだけの業を積み上げた」ということで、大した男だと思う。


マッドマックスシリーズの見どころといえば、超弩級のアクションであるが、正直ちょっと物足りなくは感じた。

それはアクションの質の話ではなく、量の話である。

アクションの質は若干CG感が気になったが、他では観られない凄まじいものが見られる。

奇想天外と言っていいバトルが繰り広げられ、「これをどう言葉にしてるんだ?」と脚本が気になるぐらい刺激的なビジュアルの釣瓶打ちである。

ただ全体の上映時間の中で3分の1ぐらいの量で、もう1箇所ぐらい大規模なアクションシーンが欲しい感じではあった。

その分、丹念にフュリオサのオリジンが語られていて、それはそれで興味深かったりはする。


おそらく自分の感性が歪んでいるのだと思うが、「フュリオサを観に行ったのだが、フュリオサの周りの方が気になってしまった」という感じである。

鑑賞後にネタバレ解説を読んできたのだが、話自体はキリスト教に根付いた、かなり深い解釈ができる作品のようではある。

ただ、正直そんなことはどうでもよくって、ディメンタスとアクションに心を奪われてしまった、という感じである。