詳しい状況は伏せるが、つい先ほどババアに話しかけられる。
ババアは止まっているJPN TAXIを指差す。
「最近タクシー増えたよね」
「まあ観光客増えてますからね、景気──」
「10年前からすごく増えたってみんな言ってる」
「・・・はあ、そうかもしれないですね」
「こんなに増えて乗る人いるのかしら」
「いるから増えてるんだと思いますよ」
「気をつけてね」
「は?」
「(若干大声で)気をつけてね」
「え?」
「あれ(JPN TAXIを指差す)あなたのでしょ?」
厚手のジャージ姿でベンチに座り、寒さに震えながらスマホいじっている俺を見て、タクシー運転手と決めつけるお前の認知能力を疑いたい。
というか、お前が喋りたいだけで、俺の話を聞く気なんかないだろ。
やっていたのがファイアーエムブレム ヒーローズだったからよかったものの、音ゲーとかアクションゲームだったら、俺キレてたぜ。
適当に話しかけるのやめろよマジで!
と心中で思いつつ、「違いますよ」とスマートに返して、以降ババアの話に生返事の塩対応をする。