日々のワンダー

平日の朝はすべからく喫茶店で過ごすのだが、それは自分だけの習慣ではない。

なので喫茶店で見かける客は大体同じ顔ぶれになっているし、なんなら大体の席も決まっている。

自分は喫茶店の奥の席でMacbookを広げる意識の高い客であるのだが、自分の前方には机に伏せ、あんぱんとコーヒーを目の前に置き、猫背でスマホをガン見している女性が座っている。

厨房のスペースが途切れる部分、ちょうど入口から死角になる席の、さらに下座に座っており、「誰からも干渉されたくない」という意志が強く伝わってくる陣取りである。


今朝、その女性が大胆に髪を切ってくる。

胸の下ぐらいまであった黒い髪が明るい茶色のボブになっている。

「失恋?」とか思うほど意識は昭和ではないが、何か心境の変化があったのかぐらいは思ってしまう。

でも実際のところ、単なるファッションなのかもしれない。


まあそれは良いとして、髪が短くなったおかげで初めてその女性の顔を見る。

その女性はいつも自分より先にその席についており、体勢のせいで髪で顔が隠れているので見たことがなかったわけである。

半年以上その女性を認識しているが、「顔を見たことがなかった」という事実に気が付かなかったことに驚愕している。