ルパンレッドとジオウの共演とか私が観ないでどうすんだ、ということで当然観に行く。
何の迷いもない。
劇場の様子を眺めたところ、ソロでこの映画を観にきていたおっさんは自分だけではなく、全体的に男女比は拮抗しているように感じる。
もしかしたら他のおっさんたちは山口乃々華か富田望生を見にきたのかも知れないが、ニチアサ仲間であることを信じたい。
基本的には「太っていた女が痩せて美人になってイケてる男に超絶モテる」という擦り倒されたシチュエーションである。
ただ主人公は実は腐女子で、イケてる男たちがイチャイチャするところを見たり妄想したりするのが好きなのに、イケてる男たちが私を好きになってどうすんだ? という話である。
それだけであれば何となく面白くならなくもなさそうなアイディアではあるが、演出や脚本がかなりマズい。
おそらく原作を90分に収めるために序盤をいろいろ端折りながら物語を詰め込んだのだろうが、単純に要約が下手くそだと思う。
それは脚本家たちも自覚しているらしく、強引な展開に関しては「マンガみたい」的な、メタですらなく、ただただ失礼な言い訳をする。
今時その認識の脚本家たちが書いているわけである。
とにかく序盤は見ていて不快になる。
一番許せないのは、序盤で主人公の兄がイケメンたちに主人公の趣味をバラす部分で、バラし方が人として最低だと思う。
話の都合上、主人公の趣味をイケメンたちに認識させる必要がある、というのはわかる。
ただ、人の尊厳を踏みにじるようなバラし方をしており、そんな行動を物語上の必然性もなしに、話の都合で書いてしまうのは全くダメである。
恥を知れと言いたい。
また演出がとにかく古臭く、今時ニコニコ動画やGet wildをユーモアに利用している。
感性がもろおっさんのそれで、おっさんの自分ですら時代遅れに感じるのに、この映画のメインターゲットが面白を感じるとは到底思えない。
というか、出演者たちすらこのユーモアを理解していない可能性がある。
そのほかにも、オープニングやエンディングも脈絡なさ過ぎてポカーンとした、というか赤面すらするような感じだったり、「編集間違ったのか?」と思うほど、カットがつながっていないところがあったりと、雑にも程がある。
制作側はジオウとルパンレッドの共演の価値をわかっているらしく、映画のなかで2人が絡むシーンは十二分に用意されている。
さらにはルパンレッドの伊藤あさひは金髪にしており、演技もルパンレッドに寄せていて、意識的であることは明白である。
その部分は割と満足するが、2人は完全なるルッキズムのキャラを演じさせられていて、ガッカリもする。
そうでないキャラがいるだけに、そっちの方をやってくれなかったかなぁ、とは思う。
役者の力量は本当まちまちに感じたが富田望生と上原実矩のコンビはよかった。
彼女たちがはしゃぐ姿はマジで微笑ましい。
ただBLに詳しくない自分でも、「イケメンたちが自分たちのためにBL的なシチュエーションを演技してくれている」ということがわかっていながら、あそこまで萌えられるものなのだろうか、という疑問はある。
自分が言うのは何であるが、彼女らの腐女子としてのステージは低いんじゃないか、という気はする。
今やボディーポジティブだのルッキズムだので、この映画におけるテーマ自体がやり辛い時代であると思う。
しかしそこに対してなんの思慮もないことは明白である。
そもそも、そこを意識していたらこの映画はやらないだろう。
やるにしたって、もうちょっとアップデートがあっていい。
穿った見方をすれば、「イイ男がイチャイチャする映像を見せる」という用途で割り切ってこの映画を制作したんだろう。
その用途はわかっているつもりであったが、演出や脚本が本当にダメだったので、いまいち入り込むことができなかった。