カニを食す

実家についてからというもの、朝昼晩、3食過剰に食べている。

今日の夕飯を一例に挙げると、1人につきカニ1杯、おでん、おこわ、山菜汁、サラダが食卓に並び、若干母親の正気を疑っている。

これから冬眠すると思っているのかもしれない。


はっきりいうと、自分はカニが好きではない。

もっと言えば、家族でカニが好きなのは父親ぐらいである。

家族の大半がカニが好きではない共通の理由は、食べるのがめんどくさい、というところにある。

物理的に殻を剥いたりするのが面倒というのはあるが、本当に面倒なのは父親である。

子供の頃、カニを食べるとバキバキの足の殻を見た父親に「カニの食べ方が下手だ」と罵られ、気を利かせた祖母が殻を剥いたカニを用意すれば、「殻をしゃぶらないとカニの本当のうまさはわからない」とか言い出し、めんどくっせぇぇぇぇぇぇぇ となってしまったわけである。

味が嫌とか、フォルムが・・・とかではなく、カニを前にするとひたすらめんどくさい父親のことを思い出し、食欲が失せる感じである。


今回のカニに関してはどうやら漁業関係者の親戚に頂いたものだそうである。

地元でカニのブランドを立ち上げたいらしく、周知活動に力を入れている、という兼ね合いもあり、子息が里帰りしている我が一家に食わせたがったらしい。

普通の家庭なら両手をあげて喜ぶところだろうが、実際のところ母親はその申し出を断ったそうだ。

「うちは誰もカニを食べたがらない」とはっきり言ったそうである。

親戚にしてみれば何かの冗談かと思っているのか、最終的には1人1杯のカニが食卓に並ぶ。


カニ1杯を独り占めできる贅沢さはわかるのだが、やっぱりめんどくさいが勝利する。