田舎に帰る時か、鼻水が湯水の如く湧き出るエゲツない気温の時にしか着られないN-3Bであるが、今シーズン、もはや着る機会は無いと踏んで、クリーニングに出すことにする。
N-3Bを小脇に抱えてクリーニング屋に出向く。
自動ドアを開けると、カウンターで女性の店員がなにかを頬張っている。
目が合うと店員は明らかに狼狽して、立ち上がってウロウロしながら、
「いや・・・、休憩がなくて、土日は休憩がなくて・・・、合間で食事するしかなくて、食べてる途中ですけど・・・、休憩がなくて食べたまんまで、でも大丈夫なんで、ただ食事中なだけで・・・、休憩がなくて・・・」
といった感じで、休憩がないことをことさらアピールし、言葉を発する間に必死で口の中のなにかを飲み下している。
あまりの狼狽ぶりにジェスチャーで「また来ますか?」と促したのだが、「大丈夫」を繰り返しながら、鉄の玉を飲み込むように嚥下する様に圧倒されて、結局店員のスタンバイが終わるまで待ってしまう。
手続きをしている間、なんとなく目に入ったのだが、店員はマックのハンバーガーを食べていたようである。
休憩がないということなので、出勤前に買ったと思うのだが、冷えたマックなんだろうか。
自分的に冷えることが前提なら、マックはナシである。
気になってざっと店内を伺っていたが、電子レンジ等は見当たらない。
店内にはバックヤード的なものがなく、カウンターの奥はオープンにクリーニング済の衣類が並んでいる。
トイレとかはあるはずだし、店員は制服を着ているので更衣するスペースもあるはずで、そこに給湯の設備とかはありそうである。
ただ、扉が見当たらない。
そんなに広い店舗ではないのだが、あまりジロジロ見ることもできず、ざっと見た限りでは扉も入口的なものも見つけることができずに退店する。
こんなことを気にするなんて思っても見なかったし、知ったところでどうなるわけではないが、クリーニング屋の間取りが気になる。
受け取りがあるので、チャンスはもう1回ある。
その時は少なくとも扉は見つけたいし、できれば電子レンジが存在する可能性を確かめて、冷えたマックを食べていないと納得したい。