八百屋が来る

夕方ぐらいの話であるが、隣のババアが誰かと何やら話している。

隣のババアが誰かと話す時はいつもケンケンしているので耳に入ってくるのだが、今日はすんなり収まる。

それから程なく、自分の部屋のドアがノックされる。

このインターバルは何かのセールスに違いないとは思うが、部屋の明かりがついていたので居留守も使えないし、けんもほろろに断った方が結局短く済むので、ドアを開けずに返事をする。

「突然すいません、ヤオヤです」と向こうは答える。

ヤオヤが八百屋に結びつくまでちょっと間ができる。

「なんでしょう?」と狼狽を隠して答えると、「今果物をお持ちしてまして、みかんとかあんぽ柿とかお食べになりませんか?」と帰ってくる。

「ああ食べないっすね」と答えると、「そうですか、失礼いたしました」と向こうは礼儀正しく答えて、問答はあっさり終わる。


コロナ前は会社のオフィスに「びわ」を売りにくる人は結構いたが、一般家庭にみかんを売りにくる人には初めて会う。

在宅で働くようになったためにエンカウントしたのだろうが、以前からそういう人は来ていたのかもしれない。

結局のところ、そういう行商の人から果物を買ったことはないが、値段とか品質とかは実際どんな感じなんだろう。

ちょっとけんもほろろすぎたかもしれないと少し思っている。