以前よりバービーには注目しており、公開のだいぶ前から観に行くつもりではあったのだが、バーベンハイマーにだいぶ水を差されてしまう。
正直、原爆に対してはそこまで思い入れはないのだが、バーベンハイマーというムーブメント自体とそれに乗っかった米ワーナー広報の無神経さには冷めるものを感じるし、それで噴き上がる一部の日本人の態度でさらに冷める。
でもまあ曲がりなりにも米ワーナーが謝罪したということで、水に流して観に行くことにする。
以前かなり穿った予測を書いていたのだが、ここは素直に謝罪したいと思う。
すいません、すごく良かったです。
自分は鼻につくポリコレを警戒していたわけであるが、そこを逆手にとってエンターテイメントにしている。
あえてポリコレ以前の世界を強調して描いてみせる、という展開は思ってもみなかった。
それをもたらすケンのモチベーションも自然で、「バービーの添え物」という劣等感は男の自分からすれば身につまされる。
最後にはそれに寄り添ってみせる優しさもちゃんとあって良い。
この話はバービーの住む世界と現実世界の行き来で構成されている。
事前の情報でそれは知っており、「大丈夫か・・・?」と思っていたのだが、大丈夫であった。
世界観的に言えば2つの世界のつながり方に釈然としないところはあるが、話の推進剤としてはうまく機能している。
現実世界にやってきたバービーが「現実世界でバービーがもたらしたこと」を知ってしまうシーンは意外にも胸に迫ってくる。
ジェンダーだけの問題にせず、人間の問題について語ろうとしている映画なんだとそこら辺でわかり、印象がガラッと変わる。
予告編を見ていた段階で懸念していたギャグに関してであるが、まあ正直きついものはある。
ただ「バービーは子供が遊ぶものである」ということに気がついてからは、ギャグのクオリティーは納得できる。
バービーランド自体が子供の想像の世界である、という部分は物語全体でもうまく機能していて、ジェンダーの問題を整理して語る下地になっている。
非常にうまい。
正直いうと自分はエンディングがあまりピンときていない。
色々なあり方を受け入れてバリエーションが増えていったバービーなのだから、より具体的な個性を持ったバービーの誕生で物語を終わらせるのはどうなんだろう。
最後のいろんな人が映るカットバックのシーンでなんとなく意図はわかるが、人間になるにしても「YES」のところで終わって良かったんじゃないか、という気はする。
その後は完全に蛇足に感じる。
色々書いたが、一番良かったのはケンのボンクラぶりである。
最後のケン同士のバトルシーンは、馬鹿馬鹿しくて狂おしいほど好きである。