夜が明けたら、いちばんに君に会いにいくを観る

【公式】映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』オフィシャルサイト

映画を観るターンがやってきたのだが、上映スケジュールを眺めても特に観たい映画はなく、なんの感慨もないままに機械的に件の映画を観にいくことにする。

自分はティーン向けの映画を折りに触れてみているが、「そこそこ楽しめる」というのがわかってきて、安牌を捨てる感覚である。

以前の自分なら「こんにちは、母さん」を観に行っていたと思うが、随分保守的になったもんだと思う。


マスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜。
自由奔放で絵を描くことを愛する、銀髪のクラスメイト・青磁
何もかもが自分とは正反対の青磁のことが苦手な茜だったが、
彼が描く絵と、まっすぐな性格に惹かれ、茜の世界はカラフルに色づきはじめる。

あらすじはこうである。

文章からするとイントロダクションっぽいが、これはあらすじであり、この映画はだいたいこんな感じである。


とにかくこの映画は徹頭徹尾、ほぼつかみどころがない。

そう感じる主な要因は「度がすぎちゃってる映像の綺麗さ」というところにあると思う。

舞台で言うと主人公の茜の部屋とか青磁の屋上のアトリエとかが顕著だが生活感を全く感じることができず、フードで言えば朝食のトーストとか自宅がカフェということを差し引いてもインスタ映えしすぎだし、登場人物で言うと全員小綺麗で、総じてどこにも現実感がない。

なんなら最近好んで見ている異世界モノのアニメの方がもうちょっと現実味がある。

逆に言えば青磁の絵だったり、AIイラストのようなルックの夢のシーンだったり、ドローンを活用した映像だったり、映像の綺麗さでハッとするような部分はある。

ただそれらの存在が映画の空疎さを加速させている。


物語もやはり現実味がない。

クロロホルムを染み込ませたハンカチを鼻先に突きつけるかのような匂わせがあり、それに呼応した新事実は突拍子もないことが提示され、最終的な全体像はファンタジーの域に達した感がある。

廃遊園地の夕焼けのシーンの会話はゾッとした。

最近の物語の悪いモードだと思うのだが、匂わせだの伏線回収とかが猛威を振るっており、サプライズやカタルシスがあることが良いことだとされている気がする。

別に青磁の過去とか茜と青磁の因縁とかは匂わせにしないで、普通に経緯として語って、そこから関係を構築していくみたいな話で良いと思う。

特に茜のキャラは非常に興味深く、「マスクが手放せない」という文言を見て、コロナに絡んだ何かかと思っていたが、原作はコロナ前に描かれていたそうで、物語上はコロナと全く関連がない。

マスクはコロナ以上に重い意味を持っており、マスクが手放せなくなった経緯に関してはよくできている。

そこをサプライズに絡ませてしまったことで、意味が少し安くなってしまっている。

茜と青磁の関係は前提として、茜のイニシエーションに集中してほしかった。

ところでこの映画のタイトルは「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」であるが、何のことだったんだろう。


茜を演じる久間田琳加はよい演技をしていると思う。

ただこれは自分の認知の問題かもしれないが、可愛いだったり、綺麗だったり、シーンごとにコロコロ印象が変わるので、久間田琳加の正解の顔がどれなのかよくわからない。

キャラ的に映画の半分ぐらいマスクをしているというのもあるかもしれない。

問題は青磁役の白岩瑠姫で、リアル今日あまのメルトである。


まあここまで酷評してきたが、つまらない映画ではなく、普通に観られる。

ただ「ファンタジーずぎる」ということである。