トマス・ピンチョン問題

ちょっと前から、図書館に通っている。

うちの近くの図書館は、PC持ち込みで作業できるスペースを3時間無料で貸し出している。

自宅だと気が散るという理由で、休日も外でMacを開いて色々作業したりする。

大体は喫茶店とかでMacを開いているのだが、図書館にそういうスペースがあることを知り、一度試してみたら、BGMも流れていないし、静かで本当に集中できたので、割と頻繁に使うようになる。

しかしながら図書館が快適と思っているのは、もちろん自分だけではなく、結構な頻度で満席になっている。

果たして今日も満席であったが、司書に直近で席の空く時間を聞くと、30分後らしかったので本を物色して暇を潰すことにする。


当たり前のことだが、図書館なんで読みきれないほど本がある。

これは目的なしに彷徨いたところで途方に暮れるだけ、ということである。

何か読みたいものあったかな、と頭の引き出しを総ざらいしながら歩くうちに、真っ黒の背表紙が一角を占めているのが目に入る。

ふと見ると、トマス・ピンチョン全小説が並んでいる。


もっと若い頃、サブカルにどっぷり浸かっていて、その流れで重力の虹に挑戦したことがある。

当時の自分にとっては結構な額だったが購入する。

しかしながら全く歯が立たず、上巻を3分の1も読まないままに挫折する。


トマス・ピンチョンはNot for meなのだとは思うが、どの作品もイントロダクションがすごく興味深く、全作読んでみたいと思わせる。

当然全小説に関しては前から気になっていたが、1冊3000〜5000円と興味本位で出せる金額ではない。

しかも一度挫折しているので、なおさら手が出ない。

それが図書館に揃っていて、読もうと思えば読める、という状況であることが判明してしまう。

これは「チャンス」ではないのかと思い、「重力の虹」を手に取り、冒頭数ページを読んでみる。

・・・そっと棚に戻して、自分にはまだ早い、と思いながら、暇つぶしを再開する。