歴史に残る悪女になるぞ

TVアニメ『歴史に残る悪女になるぞ』公式サイト

2024年の秋アニメが始まっており、順次1話を視聴している。

「歴史に残る悪女になるぞ」はその1つであり、1話を見た限りではまあ普通の悪役令嬢ものかなという判断であった。

そう思ってから、「普通の悪役令嬢もの」という概念が自分の中にあることに若干びっくりした。

アニメ見た段階では「とりあえず粛々と見ていく」という評価であった。

その後、日々のルーティンである動画を見終わり、もうひとつのルーティンである無料マンガアプリを見ている時に、アニメ化の影響か「歴史に残る悪女になるぞ」のマンガ版が配信されていることに気がつく。

それでなんとなく無料の範囲を読んでいたのだが、結果的に電子書籍版を購入していたよね。


この物語は、乙女ゲームの悪役令嬢に転生し、主人公の聖女に立ちはだかるために歴史に残る悪女を目指す、という、悪役令嬢としての王道を歩む話である。

普通の悪役令嬢ものは、本来破滅に向かうはずのレールをいかに外れるか、ということがテーマになる。

それは婚約破棄した王子を見返すだったり、別の幸せを見つけるだったりが悪役令嬢もののテンプレであるのだが、そこからは外れている。

悪役令嬢を完遂する、という話はこの作品が初めての経験である。

そういったあまり読んだことのないテーマの作品であるが、話の展開が絶妙に良い。

主人公である悪役令嬢は変わった性格ではあると思うが、主旨が一貫しているので全然飲み込めるし、やっていることに痛快さもある。

本来のヒロインである聖女も、「ご都合主義の乙女ゲーの主人公はどういった人物像なのか」という部分で非常に説得力があり、悪役令嬢のキャラを際立たせるだけでなく、聖女自身への興味も掻き立ててくれる。

それだけでなく、読み切りの形で攻略対象の男子のかなり踏み込んだ内面の話が提供され、出てくる登場人物にまったく隙がない。

それらの登場人物のアンサンブルが丁寧に描かれているのも見どころである。

世界観もしっかりしている。

個人的にはデスノートに連なる、「ありていな発想を丹念に掘り下げる」系の作品だと思う。


マンガを読んでいて、「この悪役令嬢を中村カンナがやるのか・・・」とアニメに思いを馳せてしまう。

中村カンナはウマ娘で我らがナリタトップロードの声を当てている声優である。

正直自分はそれしか知らないのだが、なんとなく声や演技からすると、裏のない善人を演じるのがあってる人という気がする。

しかしながらマンガにおける15話で、悪役令嬢史上、最高にいかつい一言がドロップされるのだが、それを中村カンナが言うのは見たくもあり、見たくもなし、である。

その一言を皮切りに、世界観だったり、悪役令嬢のモチベーションだったり、聖女の内面だったり、異世界転生の意味だったり、この物語の根底を射抜く最高のシーンが開幕するので、中村カンナには頑張って欲しい。

あと、聖女役に石見舞菜香はわかりみが深い。