実家のある地域はとうに限界集落になっていて、もう何年も新生児が生まれておらず、亡くなるか、市街地に家を建てて引っ越すかで流出が続く。
そのため店が一件もない。
これは誇張ではなく、対面販売を唯一行なっていた酒屋が数年前に店を閉じてから、自販機以外にお金を使う場所がない。
それでもスーパーの移動販売は来ていたが、それすらもほとんど来なくなったと嘆く。
70年近くこの場所に住み続けている両親が、ついに地元愛を超えて、「なんでこんなところに住んでいるのかよくわからない」と言い出している。
そんななか、実家の2軒隣にカフェがオープンした。
小屋として使っていた建物をリフォームしてオープンしたそうだ。
母親の話だと、マスターの女性は地元の人ではなく、市街地の人らしい。
いろいろ疑問はわくが、その疑問は、なぜこんなところにわざわざカフェを開いたんだろう? というところに集約される。
そのたった一つの疑問を解決したくて、今日合流した弟を誘い、そのカフェに出向く。
そのカフェでケーキとコーヒーをいただいたが、ちゃんとしたフードを出す店であった。
コーヒーもハンドドリップで、値段も1杯500円とかするが、割と納得感はある。
パウンドケーキも手作りで、添えられていたブルーベリージャムも手作りなんじゃないかと思う。
もちろん美味しい。
建物も、見たことないような大きいガラスの扉が入り口に備え付けられており、ロフトが連続しているような奇妙な間取りで、不思議な建物であった。
とにかく随所にこだわりが感じられるカフェで、むしろここまでこだわっているんだったら、こういう限界集落でオープンするのもありうるのかも、という気がする。
なぜこの土地でカフェをオープンしたのか?
その真相をマスターに聞いてみたかったが、残念ながらマスターは保険の外交員とおぼしき人とずっとガンの話をしていたので、真相は闇の中だ。