10万分の1を観る

映画『10万分の1』公式サイト | 大ヒット公開中

12/1は年に1度の映画の日で、たった1000円で映画が観られるというのに観たい映画が全くない。

今はこじんまりとした邦画ばかりで、もう少しすれば「魔女がいっぱい」だの「ワンダーウーマン 1984」などの大作ハリウッド映画が戻ってくるみたいなので、それまでの我慢である。

さて、こういった際には選択肢として「ない」映画を観に行くことにしているが、「1番ない」映画が「STAND BY ME ドラえもん 2」で、「ドラ泣き」という言葉のあさましさと、「山崎貴」のダブル役満で箱下を軽々と突破したので、次点の「10万分の1」に決定する。


そんな訳で全く期待しない上に、前情報をほとんど入れずに観に行く。

タイトルと予約をする際に映画館のサイトで見た写真で「なんとなく難病もののラブストーリーなんだろうな」ぐらいの感覚で、男と女のどちらが病気になるのかも知らず、なんの病気かも知らずに観る。

なので劇中、「ALS」という病名が飛び出て絶句する。

ALSの末期がどんなことになるかはわかっているので、ラブストーリーの推進剤として軽々しく取り扱っていいような題材ではないと思ったためである。

特に映画序盤は少女漫画のテンプレ展開で、少女漫画なんかほとんど読んだことがない自分が抱く偏見に全くそぐわず物語が進み、この展開だったら下手すりゃALSが完治するんじゃないか、と危惧までしてしまう。

とにかく観ながら「この映画はどこに着地するのか(どこまで描くのか)」が非常に気になってしまう。


結論を言うと、結末はそれ以上描いたらテーマが変ってしまうギリギリのところでラブストーリーとして終わる。

ALSを恋愛の出汁として使うんじゃないかという危惧も杞憂で、中盤からALSにかなり踏み込んだエピソードが展開され、そこから良い具合に話が積み上がっていく。

それがクライマックスで結実し、序盤のテンプレ少女漫画展開すらもうまく転じて、最後はグッとくるエンディングにつながっていく。

もっと言うと、最後はちょっと泣きそうになる。


それでも「病気の進行度合いがよくわからない」とか「足がうまく動かない人とそんなところに行くのは流石に無理がある」とか「祖父のデリカシーはちょっと違うんじゃないか」とか色々思うところはある。

話としてのソツの部分はいっぱいあるし、出演者たちの演技も安定しない感じもあるが、映画全体としてはバランスよく仕上がっているとは思う。

結論としては、「思ったよりよかった」という感じである。