予告を見て、通り一遍のラブストーリーなんだろうと思い、歯牙にもかけずにいたが、呟きやらラジオで良いという噂を聞き、まあ他に観たいものもなかったので観にいくことにする。
300席ほどの劇場でほぼ席が埋まっていて、割引デーの日曜日ということを差っ引いても、入りは多いと思う。
自分と同じように口コミで入った客だろうか。
予告を見た際に思った、「ありふれたラブストーリーなんだろうな」という印象は全然間違いではなかった。
ドラマとしてありきたりな人物造形だし、話もそこまでリアリティーがなく、都合の良いドラマティックな展開が繰り広げられる。
しかしその印象は見ているうちに逆転していき、恋の遍歴を重ねるうちに起こる感情の変化を軸に物語が描かれていることに気がつく。
その感情の変化に関してはおそらく万人が理解できる類のもので、それを表現するためのプロットだったりエピソードだったりする。
ドラマとして有体な展開を「徹底的に」「過不足なく」「丹念に」積み重ねることで、恋についても「徹底的に」「過不足なく」「丹念に」描いている。
そこがこの映画のフレッシュさである。
自分はクライマックスのファミレスのシーンで不覚にも泣いてしまう。
あのシーンは非常にドラマティックであり、現実に起こりうるようなことではないのだが、この映画の終着点として素晴らしい。
ファミレスに入った後の菅田将輝と有村架純の会話に一瞬戸惑ってしまうが、その後に起こる劇的な展開が素晴らしく、きれいに裏返され、落涙する。
恋の本質を観た思いである。
序盤の菅田将輝と有村架純の人物造形や考え方や生き様が気に入らなかったりしたのだが、全部計算ずくでやっていることがわかる。
菅田将輝と有村架純の演技も素晴らしいものだと思うが、自分は脚本の素晴らしさを褒めたい。