何かと評判の良いゴールデンカムイか哀れなるものたちを観に行こうとしていたのだが、どこの劇場もそこそこ混んでいる。
いい席が取れないので早々に諦め、ちょうどいい時間に上映されていて席の具合もそこそこであるサイレントラブを観に行くことにする。
「浜辺美波がみられるのでいいだろう」という理由もある。
声を捨て、毎日をただ生きているだけの蒼。ある日、不慮の事故で視力を失い絶望の中でもがく音大生・美夏と出会う。何があってもピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女をすべてから護ろうとする。だが、美夏に想いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ。蒼の不器用すぎる優しさが、ようやく美夏の傷ついた心に届き始めた時、運命がふたりを飲み込んでいく──。 映画『サイレントラブ』公式サイト
という、往年のケータイ小説のようなラブストーリーであるが、包み隠さずにいってしまうと、まあひどい映画である。
やりたいことをなんのフィルターも通さずに抽出してぶちまけた感じで、目の見えない女と声が出ない男のラブストーリーというお題目を完遂するために、ディテールの全てを捨て去っている。
冒頭から最後まで常に「なんだこれ」と思いながら観ていたが、いちいち論ってもしょうがないレベルである。
とりあえず1番気になったところを挙げると、主人公の蒼が声を失った理由に関しては「いや、普通に死ぬから」と思ったし、美夏の目が見えなくなった理由も「いや、目が見えなくなるだけじゃ済まないから」と思った。
そもそも蒼がスマホの文章読み上げを利用して他者とコミュニケーションを取る場面があって、なぜ美夏にそれをしないのかについては「鈴を使いたいから」という作劇上の理由しか思いつかない。
「サイレントラブ」というタイトルの根底に疑念が生じてしまう。
しかしながら、残り30分ぐらいで超展開が起こり、衝撃を受ける。
全く持って想像の埒外のことが起こって、もう考えが一転して「この作品はコメディーとして作られているのではないか」と疑ってしまう。
そう考えれば、これまでの全ての展開に納得がいく。
さらにはエンディングでリバイアサンの最後の危機に匹敵する展開が訪れる。
最後まで真顔で笑い話をされた感じであり、未だ製作者の真意がわからない。
はっきり言って酷い映画ではあると思うが、狐につままれた感じになったのはすごく良い。