扉の外の出来事 #2

新聞の勧誘員にお引き取り願ったその後、今度は怒号が聞こえてくる。

何かと思って聞き耳を立てると、老人と女性が何やら言い合っているようである。

老人は激昂しており、女性が言いくるめるように語りかけている。

それが10分ほど経っても全く収まる気配がないので、たまらず様子を伺うことにする。


激昂する老人は下の階に住む女性で、腰が曲がっており、カートで出歩く感じである。

会うと挨拶するぐらいであり、そこまで深い関係性はない。

ただ、挨拶すると「オアヨ〜ゴザイアス」ぐらいに呂律が回ってない返事を返されていて、少なく見積もっても80は超えている感じである。

それがカクシャクとハキハキと怒りの声をあげているので、少し狼狽する。

相手の女性の方は初めて見かけたが、終始冷静な感じで老人に話しかけている。

話を聞いていると、どうやら女性はその老人の身内のようで、毎月お金を振り込んでいるのに家賃を滞納しているので確認に来たという感じらしい。

口座をチェックさせろという女性に対して、老人はいろんな言い訳を激昂して語っているという状況のようである。

自分が様子を伺い始めた頃には、明らかにどこかの配達員と思われる(おそらく無関係な)男性も参戦しており、いろんな方面から「関わらない方がいいな・・・」という判断を下す。

止めるのは諦めて、ノイキャンでやり過ごすことにする。


まあなんというか、普段の老人からは想定し得ない様子に釈然としないものを感じる。

怒りが肉体の衰えを超えて若返らせるのか、老人とはそういうものなのか、それともビジネス耄碌なのかはよくわからない。

ただ、今後挨拶するたびに「ん?」という気持ちになってしまうことに関しては避けられそうにない。

「めんどくせぇ」とは思ってしまう。