水辺のスケッチ

今年はどうも印西市に呼ばれる年である。

夕方ぐらいに用事が終わり、もう帰宅するだけであるが、急いで家に帰ってもやることがないので、柏まで歩くことにする。

Googleマップで経路を探索すると、手賀沼沿いに18kmとのこと。

なかなかの距離であるが歩けなくはない、という判断を下し、出発する。


程なく、川に面した道に至る。

日は暮れかけていて、川の向こうにオレンジ色の光に染まる空が見える。

遊歩道が整備されていて、その景色を眺めながら、ずっと歩くことができる。

しばらく歩くと、川縁で羽を繕っている白鳥の姿が見られる。

びっくりするほど大きい。

その側で、老人が釣りの道具をかたずけているが、老人とそんなに変わらない大きさなんじゃないかと錯覚するほど。

そして川幅はどんどん広くなり、湖っぽくなっていく。


川面に夕日が映る。

水に浮かぶ鳥が浮かび上がる。

どんどん日は暮れていく。

街灯がなく、17時過ぎた頃にはほぼ真っ暗になり、ちょっと怖いぐらいになる。

右手は田んぼが広がっていて、その向こうに街の灯りが見える。

左手は手賀沼が広がり、その向こうにやはり街の灯りが見える。

手賀沼の向こうの空に、時折飛行機が飛んでいる。

成田空港からの旅客機だと思うが、よくわからない。

自分は今、街から隔絶したところ歩いているのだ、という気分になる。

そして、街の灯りを眺め、あの灯りの元に生活があり、それぞれに人生があり、飛行機が幾人も乗せてどこかに向かい、あるいは旅行かもしれないし、あるいは帰宅なのかもしれないし、いろんな事情を抱えてつかの間一緒に移動しているんだという、ありきたりだけど胸を打つ事実に浸る。


やがて、拓けた道に合流する。

コンビニを見かけて、正直、安堵感を感じる。

そして、それすらもありきたりな感情なんだろう。