先日Twitterでポンポさんのアツいツイートを見かけ、なんとなく検索してみたところ、ほぼ絶賛である。
「号泣した」とか、「魂が震えた」とか、大袈裟な表現が乱れ舞う。
「そこまで言うなら、どんなもんじゃい」という冷めた姿勢で観に行くことにする。
この映画は、映画プロデューサー・ポンポさんに抜擢された新人監督ジーンの初作品の制作過程を追った話である。
Twitterの感想などからなんとなく映画制作の話なんだろうな、ということはわかっていたのだが、設定がかなりファンタジーで「ハリウッド」ならぬ「ニャリウッド」が舞台で少し面くらう。
映画制作の話なのに、なぜ架空の世界が舞台なのか不思議に思ったのだが、観ていくうちに、リアリティーラインを思いっきり下げないと成立しない話であることに気がつく。
はっきり言うと、全てが感動のためにお膳立てされた話で、何もかもが主人公に都合よくできすぎている。
この映画は新人監督のジーンのビルドゥングスロマンであるべきだと思うが、劇中のジーンは何も成長していない。
初めから映画制作の才能を持ち合わせているし、周りの人間がジーンを優しく受け入れているだけである。
トラブルも一応起こるが、それはジーンと関係ない所で、他人の努力で解決する。
そしてとってつけたような大団円を迎える。
チートな能力やら、主人公に都合の良い世界観など、構造的に異世界転生的な感じがする。
また、構造的な最後のネタを成立させるために、大分ストーリーが犠牲になっている感がある。
キャラクターのバックグラウンドはもっと語られないといけないと思うのだが、だいぶ端折られているように思う。
特にアランとジーンの関係は表層的すぎて、アランがなぜそこまでジーンにアダプトするのかがわからない。
一事が万事そんな感じで、表層的にしかキャラクターのバックグラウンドが語られないので、誰にも感情移入できない。
ポンポさんがタイトルである意味もよくわからない。
また細かいことを言えば、土下座だの、過労を押しての作業だの、残業だの、今時感動のためにそれを描くのははっきり言って古いと思う。
演出も「アニメ」のレッテルでバカにすることを全部やっている印象である。
事前の感想を読んでハードルが上がったせいではなく、何も知らずに観てもあまり感心できなかったと思う。