トムとジェリーを観る

映画『トムとジェリー』オフィシャルサイト | 2021年3月19日(金)公開

自分ぐらいの年代のおっさんはトムとジェリーが血となり肉となっているはずである。

物心つく前から途切れることなく再放送が行われており、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し見ている。

自分はDVDのセットも購入しており、すでにプレイヤーがないのに断捨離をくぐり抜け、未だ手元にある。

つまりはトムとジェリーが映画化となれば観ることを運命づけられているわけである。


「実写化」という報を聞いた際には不安しかなかったわけであるが、映像に関しては思った以上に違和感はない。

子供の頃に見て染み付いている見慣れたトゥーンの動きはきちんと再現されているし、それが実写の映像できちんと展開されている。

CGが浸透し、洗練され尽くした今の時代、この程度はできて当たり前で、違和感が出るようであればそれこそ問題であると思う。


物語も、トムとジェリーに関しては、子供の頃に慣れ親しんだトムとジェリー節であると思う。

ただ今改めて見ると、「ジェリーは結構嫌な奴だな」と感じてしまう。

大人になったということなんだろう。

実写の人間に関しても、全員がトゥーン的ななんらかの欠陥を持った人間として描かれていて、それがコメディーの要素になっている。

ネタバレでもなんでもないと思うのであえていうが、登場人物の何人かは倫理的にどうしても許し難い不正を犯すのだが、色々あって最後は大団円を迎える。

「トゥーンだから」で片付けるにはちょっとやりすぎな部分があり、鼻につく。


実写とアニメの融合という意味では「ロジャー・ラビット」という金字塔がある。

残念ながらその驚きや必然性には到底及ばない。

そもそもストーリーがトムとジェリーでなくても成立する話で、ドナルドダックでもベティーブープでもよかった気がする。

自分が観たかったのは、トムとジェリーの話で、クロエ・グレース・モレッツの話ではない。

そういう意味であまり満足できない映画ではある。