エンパイア・オブ・ライトを観る

エンパイア・オブ・ライト | Searchlight Pictures Japan

いつものように特に観たい映画がないんで、会社帰りの時間にちょうどいい上映時間の映画を観ることにする。

本当のところ、ちょうどよく上映されているのは「レジェンド&バタフライ」であるが、なんというか「キムタクかぁ・・・」という気持ちが勝ってしまい、少し足を伸ばした映画館でエンパイア・オブ・ライトを観ることにする。

エンパイア・オブ・ライトは例によって、観に行こうと決めるまで全くノーマークの映画である。


1980年代初頭のイギリスの静かな海辺の町、マーゲイト。辛い過去を経験し、今も心に闇を抱えるヒラリーは、地元で愛される映画館、エンパイア劇場で働いている。厳しい不況と社会不安の中、彼女の前に、夢を諦め映画館で働くことを決意した青年スティーヴンが現れる。職場に集まる仲間たちの優しさに守られながら、過酷な現実と人生の苦難に常に道を阻まれてきた彼らは、次第に心を通わせ始める。前向きに生きるスティーヴンとの出会いに、ヒラリーは生きる希望を見出していくのだが、時代の荒波は二人に想像もつかない試練を与えるのだった・・・。
エンパイア・オブ・ライト | Searchlight Pictures Japan

という映画である。

あらすじからして「感動作なんだろうな」という雰囲気がするのだが、観た後で残ったのは狐につままれた感覚である。

演出とか物語のトーンに名作が醸し出す雰囲気だけはあるのだが、結局のところ雰囲気だけある。

1番の問題は「物語が散漫でピンとこない」というところである。

この話はヒラリーが抱える心の闇と黒人差別の2つを軸に話が進む。

しかしその2つが特に交わるわけでもなく、並走している。

黒人差別がヒラリーに特に影響を与えるわけではないし、ヒラリーの心の闇が特にスティーヴンに影響を与えるわけではない。

2人とも人格が確固としすぎていて、物語としてのイニシエーションが不発に終わっている。

それがとってつけたようなエンディングに顕著で、最終的にスティーヴンが行う決断は物語の過程を全く無視している。

「結局色々あったけどスティーヴンは最初からほとんど変わってないのか・・・」と思ってしまう。


淡白な映画のトーンや美しい映像は好みであるが、良い映画の押し付け感があって、ちょっと引いてしまう。